珈琲屋に送るラブレター

 

きっと上がる頃には胸がいっぱいになってると思うから、今のうちに。

何ヶ月も前から退職退職と退職アピールが激しくて申し訳ないけど、大学生の間ずっと続けていたバイトを辞める事があまりにも現実味がなくて、やたらアピってしまった。

その位、コーヒー屋でのバイトは私の大学生活において良くも悪くも大きな存在であり、青春でした。

 

 

バイトを始めたのは大学1年の5月。

ほぼ初めてのバイト、まだデリケートで社会をよく知らない私にとって最初の半年は地獄だった。

ひとり立ちするまでに覚えなくちゃいけないことが受験か?って位多いし、同じ学生なのに先輩は怖いし、レジは初めて来たお客さんと同じくらい何も分かっていなくて何を聞かれても答えられない、バーに立てば覚えたはずのレシピは忘れる、締め作業は次に何をすればいいのか、どうやってやるのかすぐに覚えられないし、時間内に終わらせられない、先輩に怒られる。

人に1:1でキツくものを言われたことがほぼなかった私には怒られ耐性がなく、先輩にビシビシ指導された次の日、ストレスからか、布団を出られず大学をサボった。

 

独り立ちした後も、全ての仕事がスムーズにできるようにならないし、かといって愛嬌もないからお客さんと全然お話もできない。

土日の忙しい時間に入れば、焦って何から何までぜーーーんぶ間違える。ピークの時間帯に間違えてレジの電源を落としたこともある。

レシピ、コーヒー豆、グッズ、フード、仕込み、覚えなくちゃいけないことは次から次へと出てくる。

しかもマニュアルがないから、自分の裁量で動かなくちゃいけない場面が本当〜〜〜に多い。

入って半年が過ぎる頃まで、心から入社したことを後悔していた。

出勤前の憂鬱さをよく覚えている。

今でも、出勤したくね〜〜〜とほぼ毎出勤思うけど、それは面倒くささであって、出勤すれば結局楽しいのだけど、当時の出勤したくね〜〜〜は明らかに「嫌」だったし、出勤してもやっぱり楽しくなかった。

 

だけど、どんだけ嫌で下手なことも無理矢理時間と経験を積めば慣れるらしい。

同期の女の子とシフトが被ることが多くなってきたのもあって、どんどんバイトが楽しくなってきていた。

そして、自信を持って働けるようになったかな?くらいの頃、先輩が卒業して、わたしと同期は学生でいちばんベテランになった。でもまだ入って1年も経ってないし、レベルもいちばん下。というのも、当時在籍していた学生が4年生と1年生、というアンバランスなメンバーだったから。

それから今のいままで、私と同期はずーっと学生のリーダーだった。

それがすごく不満だったこともあった。

先輩と後輩たちはそれぞれのスピードで育成されていたのに、私たちは成長を急かされているような気がした。まだ経験が浅いのに、マネージャー目指さないの?って詰められることがすごくストレスだったし、目指そうとしない自分にも欠陥があるように感じて嫌だった。

 

 

だけど、信じられないことに3年目には学生マネージャーを目指していた。あんなに嫌だったのに。考えは変わるものだね。

きっかけは後輩の育成に興味が出始めたから。だけど、本当にやりたいって確信したのはバイトとは全く関係のない就活セミナーの講演だった。そのセミナーの先生は、学生の良くない癖として「貰ってばかりで、返さない」と話していた。うわ、これ、わたしだ。と思った。

人を育てるには時間もお金もかかる。たくさんのマネージャーが私の育成に尽力してくれた中で、私は何か返せたかな?と思い返した。自身が成長することもそれに対する一つの答えだと思ったけど、でもやっぱり私は能動的にこの店に対して貢献して恩返ししていきたかった。

それと、ただの学生アルバイトにもマネージャーにチャレンジさせてくれるような、際限なく成長できるレールを敷いてくれてるので、遠慮なく乗らせてもらおうと思った。

 

だけどマネージャーを目指し始めてからは、また少し苦しい期間が始まった。マネージャーになってからも、それは続いたし、さらに苦しくなった。あまりにも無理すぎて、体調が悪いと嘘をついて当日欠勤したこともあった(ごめんなさい)。やっと慣れたのはつい最近だ。

 

 

 

やってもやっても知らないことがたくさんあって、勉強しても定期的に新たな知識を吸収しなくちゃいけなくて、このバイトは本当に底なしだ。それでもここまで続けたのは、ちょっとの意地と、楽しさと、愛着からだ。

なんだかんだ言って、わたしは自分のお店がとっても大好きで、たくさんの人と繋がれるこの仕事が好きだ。

大袈裟かもしれないけど、ここで働いていなかったら、今の自分もいないし、春からの就職先も選んでいないと思う。

 

温かい人仲間たちと温かいお客さんに囲まれて、大変なこともたくさんあったけど、実りある幸せな4年だったな。

これからも、珈琲屋の店員だった私は私の中で存在し続けるんだろうと思う。